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中医学と病原体

今回は漢方薬局の視点から、感染症についてちょっとしたご説明をさせていただきます。中医学と西洋医学で考え方がこんなに違うのか〜、と気楽に読んでいただけたら嬉しいです。

ミクロの世界に強い西洋医学

西洋医学の感染症治療は顕微鏡の技術とともに発展してきました。「病原体そのものを発見する→分類して構造を調べる→個別の特効薬を作る」といった技術は西洋医学の得意分野です。

ただし、弱点もあります。未知の病原体が現れた場合や、病原体が変身(変異)してしまった場合に新しい治療薬を作るのに一定の時間がかかってしまいます。

「大雑把」な中医学

伝統的な中国医学は、長い歴史の中で500回を超える感染症との戦いを繰り広げてきました。その中で発展してきたのが、「病原体を特定しない」治療法です。

寒さに当たって風邪をひきます。原因はインフルエンザウイルスかもしれませんしコロナウイルス かもしれません。しかし、中医学ではウイルスを特定することはせず、単に「寒邪」に当たったものと考えます。気温変化や花粉、ハウスダストなどもまとめて「邪気」と考えています。

このように身体にとって有害な自然環境を「風・寒・暑・湿・燥・火(熱)」という6種類に分類しました。大雑把にしか分けられない欠点を持つ一方、未知の感染症も含めて、全ての感染症がこの6種類のいずれかに分類できるのです。個別の病原体ではなく、それぞれの「邪気」に効果的な漢方薬が存在します。

中医学では見えない病原体を「性質」で分類します。表現上、「風」は除いてあります。
※あくまでイメージです。病原体の画像と性質は必ずしも正確ではありません。

さらに、人体は一人一人で異なるブラックボックスのようなものです。同じ邪気が入っても現れる反応が1人1人異なるため、病気の進行具合、体質や症状を考慮し、調整した漢方薬を使います。

中医学の技術では、病原体を直接見ることができません。そこで相手のカタチが見えなくても戦うための戦術を編み出してきたと言えるでしょう。まさに発想の転換です。

見えない「邪気」を症状からいかに正確に捉えるか、いかにピンポイントで治療できるどうか、が大切になります。

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