水とダイエットのお話の続きです。
ダイエットビジネス界隈に広がる「水をたくさん飲むと痩せる」という説。
本当に効果があるの?と疑問に思い、各種論文を調べてみました。
結果…
水をたくさん飲んでも痩せられるとは限らない。
という結論に落ち着きました。
論文を網羅的に調べた2013年の研究①によると「水分摂取量を増やしても体重が減るという質の高い証拠はない」と結論づけています。
また2017年に発表された研究②では、1日コップ4杯以下の水を飲む10代の肥満患者に、1日8杯の水を飲むようにアドバイスしたものの、アドバイスを受けなかった患者と比べて体重の減り方は同じくらいだった。という結果が出ています。
ただ「水を増やすように指導しただけで実際には増やせていない人もいた」という背景もあるようです。中医学的には、肥満の時は水分が停滞していることが多いので、「水分補給の量を増やすのは難しい」というのも納得がいきます。
残念かもしれませんが、水分摂取の量を増やしてもダイエット効果があるかどうかはわかりません。
ただ一つ、ポジティブな結果を示す面白い研究も見つけました。
毎食前に水を500mL飲むと痩せる?
2015年に発表された研究③では興味深い結果が出ています。
食事前に満腹感をイメージしただけのグループに比べて、食事の30分前に500mLの水を飲むよう指導されたグループでは、12週間での体重の減少幅が平均1.2kg大きかったとのことです。
食事の前に多量の水が胃に入ることで、栄養成分の吸収が抑えられたのでしょうか…?
注意しなければならないのは、この研究では「食前に500mLの水を飲む」ということがキモであり、必ずしも「1日の水分摂取量を増やすこと」ではなかったことです。
また、体重減少が脂肪の減少によるものなのか、筋肉や骨の減少によるものか、などといったことは一切考えられていませんでした。リバウンドに関しても検証されていません。
それにしても、毎食前に500mLの水を飲むというのは結構ハードな気がします。私自身が挑戦したら、常にお腹がチャポチャポしてしまいそう。水を捌いて気血を作る「脾」を傷めてしまいそうです。
副作用は全く報告されなかったとのことですが、中医学的な養生を推す身としては、限られたごく一部の方にしかおすすめできないなと思った次第です。
結果はどうあれ、こういった研究に敬意を表します。
「これをやれば誰でも、絶対に、健康的に痩せられる!」という方法はなかなかありません。だからこそ、その人に合った漢方薬や生活スタイルをお客様と一緒に見つけていくのが、当薬局の役割だと自負しております。