本日は一番人気(?)、ダイエットのお話です。
「漢方薬で代謝を良くして痩せたい」というお客様は本当に多いです。私もできる限り力になりたいので、痩せる漢方薬については常にアンテナを張り、気が向けばあれこれ考えています。
でも10年来「本当に痩せる漢方薬」には出会えていません。世の中には様々なダイエット漢方的なものが溢れていますが、私自身どうしても腑に落ちないのです。
自分自身が納得できないものを勧めることは気が引けるので、「漢方薬で痩せられる場合もありますが、漢方だけではなかなか難しいですよ」と煮詰まらない返答をするしかない現状です。私には「ダイエット漢方」を高らかに謳うことはできません。笑
防風通聖散=ダイエットの薬?
「ダイエット漢方」として有名なのは防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)ですね。ドラッグストアなどでもスタイリッシュに変身してたくさん陳列されているため、ご存じの方も多いことでしょう。
実は、防風通聖散は昔の中国で、カゼ薬の一つとして考案されたものです。日本では平清盛が栄華を極めていた時代です。飢饉も珍しくなかったこの時代、ダイエットの需要が多くあったとはとても思えません。
それがいつの間にか「ダイエットには防風通聖散」という謳い文句で、現代の日本に定着しています。
かなり有名な漢方薬なので、体重減少効果に関する研究もそれなりに多く行われています。
肥満症患者のBMIを下げる(かも)
漢方薬の効果に関する、ヒトでの臨床試験は多くありません。そのような中でも2022年には複数の論文を集めて検証した研究(メタアナリシス)の結果が発表されました。
どのような研究なのか、ものすごく簡単にまとめると
- 肥満の人679人を対象とした研究(7件の研究を合計)。
- BMI(Body Mass Index)の低下について、防風通聖散を服用したグループ vs プラセボなどのグループで比較した。
というものです。
気になる結果は?
防風通聖散を飲んだグループでは、対照グループに比べてBMIの減少が大きかった。
ということでした。
でもちょっと待ってくださいね。「防風通聖散バンザイ!」となるのはまだ気が早いです。
小難しい話になるので詳細は端折りますが、結果の確実性がまだまだ高くないという計算結果が出ており、論文の中でも言及されています。研究の性質上も、今後の更なる検証が必要です。
ひとまずは「程度の差はあれ、肥満の人が防風通聖散を飲むと、飲まないよりBMIが落ちるという研究結果がぼちぼち出始めているな」くらいに考えておくのが妥当かと思われます。
それから注意しなければならないのは、この研究の対象となった人たちは
- BMIが最低でも24〜25
- BMIの平均値は30.6
であったことにも注意が必要だと思います。
BMIが30.6がどのくらいかというと
- 身長158cm→体重77kgほど
- 身長172cm→体重90kgほど
といった具合です。「BMIの高い人が防風通聖散を飲めば、飲まないより痩せるよね」ということしか分かっていないのです。
BMIが24に満たない人が飲んだ時に、痩せる効果が得られるという証明はされていません。
防風通聖散は「ダイエットの薬」ではない
そんな視点で、防風通聖散のパッケージを見てください。
薬効には「肥満症」と書いてあります。
あくまで「肥満症」を治す薬なのです。
ダイエットの薬とは一言も書いていないのです。
「肥満症」は少なくともBMIが25以上の時を指します。「肥満ではないけれどダイエットがしたい」という方は、パッケージデザインに騙されないようにご注意を。
最後になりますが「肥満ではなくともダイエットがしたい」という方、漢方を使う場合に確立された方法はありません。お一人お一人の体質に向き合い、試行錯誤していく形になります。ご相談は喜んでお受けいたしますので、ご興味の方はぜひご予約の上、お越しくださいませ。