妊活に取り組まれる方、月経関連の不調がある方の漢方相談をお受けする中で話題になることの一つに
「基礎体温は測った方がいいのか?」問題があります。本日はこのテーマについて、私見を述べていこうと思います。
そもそも基礎体温とは?
恒温動物において、活動による体温変化などの要因を排除し、生命維持に必要な最小限のエネルギーしか消費していない安静状態で測定した体温
Wikipedia 「基礎体温」
実用的な言い方をすれば、「睡眠から目覚めて、体を動かす前に測った体温」です。
基礎体温の微細な変動を測定するためには0.01℃単位で精密に測れる「婦人用体温計」を口の中(舌下)に入れて測ります。婦人用体温計はドラッグストアやネット通販などで、1000〜3000円前後で手軽に購入できます。
あくまで一例ですが、毎日測定して記録すると次のような表が作れます。
月経のある女性では、基礎体温が周期的に変動します。周期の後半(高温期)に基礎体温が上昇するのは、妊娠に必要な黄体ホルモンの働きによるものです。
- 排卵後:黄体ホルモンが増加 →体温が上がる。
- 月経後:黄体ホルモンが減少 →体温が下がる。
といった変化が現れます。このような女性特有の周期的な体温変化を比較的簡単に把握することができるのが、基礎体温測定です。
基礎体温測定のメリット
基礎体温を測ることのメリットの1つは、体調のリズムを掴むヒントが得られることだと考えています。そのため、次の方には基礎体温測定をお勧めしております。
- 次の生理がくる時期をできるだけ正確に予想したい。
- 妊娠しやすい時期を探りたい。
- 高温期が続く日数を知りたい。
- 体調とホルモンバランスの関係を探りたい。
- 漢方薬や生活習慣改善の効果が、目にみえる形で知りたい。 etc…
月経周期という地図の中で、基礎体温は現在位置を知るGPSのような役割を果たします。
妊娠を目的としない方も、基礎体温をホルモンバランスの変動を見極める一つの手段として活用することができます。基礎体温と体調変化の関係が分かると、日頃のケアに役立つ場面が出てくるかもしれません。
測定を負担に感じてしまう場合は?
婦人用体温計の機能は時代とともに進化しています。測定や記録はそれほどかからないでしょう。
時として問題になるのは、基礎体温の状況が目に見えることによる不安やプレッシャーといった精神的負担です。
これは私見ですが、測定がかえってプレッシャーになってしまう方は無理して測る必要はないと考えています。精神的な負担は生活の質を下げ、体調にもマイナスとなってしまう可能性があるためです。
少なくとも「基礎体温を測ると妊娠の確率が上がる」といったエビデンスはありません。測らなくてもポイントを押さえておけば、妊娠するときは妊娠します。
ただ、不安感を感じやすいのも不調の表れです。このような時は不安感の原因となっている部分に漢方薬でアプローチしていきます。生活習慣や環境の改善も必要かもしれません。
そのうち「ちょっと測ってみてもいいかな」と思える時が来ます。基礎体温のメリットは知ったうえで、より適切な方法を見つけていきましょう。