更年期の諸症状についてご相談を受ける中で、時々話題に上るのがプラセンタ注射です。
「プラセンタ注射はした方が良いですか?」「プラセンタ注射をしていますが大丈夫ですか?」と言ったご質問を受ける機会は割と多いです。
本来は医療機関で相談・解決していただきたい問題ではあるのですが、薬局で聞かれるということは何かしら相談のハードルがあるのではないかと受け止めております。
「良い」かどうかはその人次第
プラセンタ注射についてネットで検索すると、耳障りの良いことばかりが書いてあるような印象を受けます(多くの場合、感染症の潜在リスクなどもきちんと触れられています)。
そこで本記事ではあえてややネガティブな側面から触れてみます。
「更年期の美と健康に効く万能薬」かのような記載もありますが、少なくともそれは言い過ぎです。個人差は確実にあります。
プラセンタのある注射薬に記載されたデータを見ると、ある条件下で有効率77.4%と記載されています。プラセボ(偽薬)もある程度有効なはずなので、そのあたりも加味して考える必要があります。少なくとも2割程度の人は効果実感を得られない可能性があるという解釈ができることも忘れてはなりません。
重篤な副作用報告が多い薬ではないので、安全性は高いと言えるでしょう(ノーリスクではありません)。
感染症のリスクがゼロではないことから使用後は献血の制限がされる、といった条件などを受け入れられるかどうかといった視点も判断材料になるでしょう。この点に関しては後戻りができません。
こういった点を踏まえると、使用の是非はお一人お一人の価値観で異なるのではないかと思います。
使うのもよし。使わないのもよし。医療機関でよく相談してから決めることをお勧めします。
漢方薬と併用はできるの?
プラセンタの注射薬に、漢方薬との併用に関する記載はありません。中医学の視点から見てみましょう。
中国ではプラセンタが伝統薬の原料として使われてきました。「生薬名」は紫河車(しかしゃ)です。
紫河車は「腎精」と「気血」を相当に補うとされ、滋養強壮に用いられてきました。また「体を温める」性質があります。
紫河車は飲み薬なので、プラセンタ注射とは別物です。
ただ、プラセンタを使用されている場合は
「プラセンタを使っているから、気血を補う生薬、温める漢方薬は少なめでもいいかな?」
「プラセンタで余計な熱が生まれがちだから、冷ます生薬が少し入っていた方がいいかな?」
「プラセンタを使っていてもこの症状が残っているから、別の側面からアプローチした方がいいかな?」
といった思考を織り交ぜながら、お勧めする漢方薬を選んでいきます。
全体としてのバランスを取ることができれば、併用も可能と考えています。
トータルで納得のいく選択を
漢方薬局を経営するイチ薬剤師として
「プラセンタは使っても使わなくても、どちらも良い選択となり得る」
という立場です。
中医学的な視点から「紫河車」の性質に類似した漢方薬を提案することもできます。漢方相談を通じて、トータルで納得のいく選択をしていただければ幸いです。