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物価高でも漢方薬を続ける工夫

長引く物価高。生活必需品をはじめ何から何まで価格が上がり、生活に不安を感じ始めている方も多いのではないでしょうか。

市販の漢方薬の原価も上昇を続けています。中国の人件費、生薬、包装資材、運送コストの上昇、円安などが原因です。(私たちや勤め先が毎月支払っている健康保険料や10割医療費と比べれば決して高くないのですが…)

価格が上がっても、当然ながら漢方薬の効果は今までと同じです。

辛い症状、複雑な体質の改善には、適切かつ十分な漢方薬が必要なことに変わりはありません。費用がかかったとしても、必要な時にはベストな漢方薬をご提案するのが、これからも当薬局の基本スタンスです。

一方で「お財布事情は厳しいけれど、可能な範囲でできるだけのことはしたい」という方が一定数いらっしゃるのも事実です。

漢方薬の効果は0か1の世界ではなく「費用を抑えながらもそれなりの効果を得る」こともできると考えています。

私自身もカゼなどで大きく体調を崩した時などは相当量の漢方薬を使いますが、普段のちょっとした不調や体質改善には少量かつ限定的に漢方薬を活用しています。

本記事では、漢方業界泣かせかもしれませんが当ブログにたどり着いた方だけに、効果を出しつつも省コストで漢方薬を活用するための”コツ”を特別にお教えします。

漢方薬の効果を落とさず節約する方法4つ

① 価格に対して生薬量が多い製品を選ぶ

同じ名前の漢方薬でも、配合されている生薬の量が異なる場合があります。

漢方薬の中には、配合可能な生薬量の1/2量程度しか入っていないものも存在します(半量処方)。

配合量が少ないことは必ずしも悪いというわけではありませんが、製造や包装、輸送にかかるコストに変わりはないため、同じ配合であれば一般的に「生薬量の多いものの方が割安」になりやすいです。

コストパフォーマンスを重視するなら1日あたりの配合量が多い「満量処方」の漢方薬がおすすめです。

② 体調変化に敏感になる

症状が軽いうちに対処してしまうのも、節約のコツです。

本当に軽い、出始めの不調であれば生活の工夫で対処できてしまうこともあります。

  • 少し疲れを感じたら、早めに休む。
  • 気の滞りを感じたら、体を動かす。
  • 胃腸の調子がいつもと違ったら、飲食に気をつける。etc…

当たり前のことですが、とても大切なことです。漢方薬はそれらの補助として使うのが効率的です。

症状の出始めは、その原因となる「証」もシンプルなことが多いです。長引くと原因が複雑化し、漢方薬選びが難しくなるとともに、必要な生薬の量が増えて1回あたりのコストも増えがちです。

原因が単純なうちにシンプルな漢方薬を使うことは、節約につながるかもしれません。

③ 効かない漢方薬を漫然と使用しない

毎度驚かれるのですが、個人的な肌感覚として漢方薬の効果は数日以内に実感できることがほとんどです。

「漢方薬だから効果が出るまでに時間がかかる」という説明は効果が出ない時の最もらしい言い訳だと思っており、私は嫌いです。

私は効果発現まで時間を要すると予想される時には「心身の〇〇という部分が、〇〇という状態になっていそうなので時間がかかるかもしれません」とお伝えするように心がけています。

症状の根深さによっては効果実感までに2週間以上を要する場合もありますが、基本的に1ヶ月もかかりません。

効果が出ない場合は、かなりの重症か、漢方薬の選び方や生活面に問題があるかのどちらかです。

同じ人でも時間が経てば体調は変わります。使うべき漢方薬をこまめに見直して、その場その時に合わせて本当に必要なものを選んでいくことも、無駄な出費を減らして節約するための大切な方法です。

当薬局では、最初3ヶ月くらいは1〜2週間おきにご体調を伺い、必要に応じて漢方薬の調整をご提案しています。漢方薬を選ぶ前には緻密に計画を立てますが、実際に使ってみて初めて分かることもあります。

適切な期間使っても効果が得られない漢方は漫然と使用しない、有効な漢方を効率的に探し当てる、ということも節約につながります。

④ 必要な効果が得られる最小量を見極める

単純に服薬量や頻度を減らせば、節約になります。

ただし、効果が出ている漢方薬をむやみに減らしてしまうと効果も減るため、せっかく積み上げてきた体調を崩してしまうことには注意が必要です。

漢方薬を減らすのは、専門家と相談しながら、もしくは体質と漢方薬の「クセ」が分かってきてからにしましょう。

  • このくらいの状態になったら〇〇湯を使ったほうがいいな。
  • この状態の時はこの漢方を減らしても体調が維持できるな。
  • 平日は仕事で疲れるから漢方を使ったほうが調子がいいけれど、休日は使わずとも快適に乗り切れるな。
  • 以前はこのくらいの頻度で使わないと体調が維持できなかったけれど、今は減らしても

などということが分かってきたら、体調変化に注意しながら量や頻度を減らすことを考える余地があります。

漢方薬の減量や中止による「リバウンド」といったものは報告されていませんが、減らして期間が空いてから「そういえば減らす前の方が体調が良かったな」と気づくこともあるので、この方法は慎重に行いましょう。

「学び」が最強の節約術

当薬局を長くご利用いただいている常連さんの中には、ほぼご自身の判断で漢方薬を上手に使いこなしている方も少なくありません。

お客様から「こんなことに気づいたので、こんな使い分け方を試してみました。良く効きましたよ」と教えていただくことも時々あります。

「必要な漢方薬だけを、必要な時だけ、必要な量と期間だけ」臨機応変に利用できる力ほど節約に役立つものはありません。

そのためには今お手持ちの漢方薬の性質や、ご自身の体調や体質について理解を深めることが必要です。

時間をかけて漢方相談をする理由は、その場限りで最適な漢方薬を選ぶことだけではありません。ご自身の体質や漢方薬についての理解を深め、セルフケアの力を高めていただきたいという願いが多々あります。

漢方薬は飲んだら終わりですが、学んで得た知恵は一生使えます。漢方薬選びは難しいという印象をお持ちの方は少なくありませんが、皆が難しいと思い込んでいることを学ぶことが「最強の節約術」だと考えています。

中医学や漢方薬は一生探求できるほど奥深いですが、実学としてはそれほど難しくありません(ここだけの話です)。

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