皮膚病の漢方治療 〜攻守バランス編〜

皮膚のトラブル

前の記事では、「皮膚病の原因」について中医学的な考え方を記載しました。内臓機能の乱れや、精神的ストレスが原因となるお話でした。

実際には、上記の原因で身体の「防御力」が弱ったところで、環境的な要因(アレルゲンなど)や、皮膚の常在菌の攻撃を受け、皮膚病が発生するケースが多いです。

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攻守のバランス

防御力が落ち、敵の攻撃を受けている時の選択肢は2つ。

  1. 敵を攻撃する
  2. 守りを固める

のどちらかです。ただし、注意点があります。イラストにすると以下のイメージです。

怪獣を倒せば皮膚病が治るからといって強い爆弾を落としたら、味方にもダメージが及ぶかもしれません。味方が手薄になっている時に、次の怪獣が攻めてきたら万事休す、です。

それでは味方に回復ドリンクを補給したらどうなるでしょうか?きちんと味方に渡れば良いのですが、敵に奪われてしまったら、ますます不利になってしまいます。

皮膚病の漢方薬を提案する時は、攻撃と防御のどちらに重点を置くべきか、必ずと言っていいほど悩みます。次に具体的な「攻撃」「防御」について説明します。

攻撃編

身体に悪影響を及ぼす「敵」を取り除くする治療法です。体力を消耗することが多く、注意が必要です。例として、以下の方法が挙げられます。

  • 汗を出させる
  • “熱”を冷ます(炎症を鎮める)
  • “毒”を取り去る(うみと炎症を除去する)
  • 乾燥させる 
  • 大便を出させる
  • 小便を出させる など

攻撃をメインとした処方には、銀翹散、黄連解毒湯、犀角地黄湯、竜胆瀉肝湯、消風散、防風通聖散、五味消毒飲などが挙げられます。

その他、体内に溜まった老廃物を除去する目的で、血の巡りを改善したり、水分代謝を改善する薬が用いられます。

守備編

内臓機能を高めたり、調整することで防御力を上げていく治療法です。

炎症が強い時などには症状を悪化させる場合があるため、注意が必要です。ニキビができている時に高カロリーの食品を摂取すると、炎症が悪化することをイメージすると分かりやすいと思います。

  • 潤いを補給する
  • 温めて血行を促進する
  • 胃腸の消化吸収能力を高める
  • 生命物質(気血精)を補充する など

守備固めをメインとした処方には、生脈散、参苓白朮散、補中益気湯、四物湯、補腎薬などが挙げられます。

炎症が落ち着いている時を見計らい、症状の再発を防ぐことを目的とします。

攻守兼用編

時には攻守を同時に行わなければいけない場合があります。この時は、攻撃用の生薬と、守備固め用の生薬を配合した処方が使われます。

攻守兼用で使われる処方には、荊防敗毒散、十味敗毒湯、温清飲、当帰飲子、荊芥連翹湯、などが挙げられます。

攻守兼用の薬は長期的にも使いやすい反面、作用が穏やかになる傾向にあります。

攻守の切り替えが大切

今回は皮膚病にフォーカスして説明してきましたが。「攻守のバランス」は皮膚病以外の全ての症状において大切な考え方となってきます。

「攻めるのが怖いから」と言ってなかなか攻撃に打って出なければ、戦いが泥沼化して、ますます治りにくくなっていきます。守備固めにしっかり配慮した上で、「攻めるときは一気に攻める」ような漢方薬の使い方が理想的です。

また、忘れてはいけないのが普段の生活習慣です。乱れた生活習慣が、知らず知らずの間に戦況を悪くしてしまうことも。生活習慣を整えていくと、「漢方薬での戦い」も進めやすくなるはずです。