じんましんは薬局でも時々目にすることのある症状です。
じんましんは、何らかのアレルゲン(アレルギーの原因となる物質)が原因となって発生するアレルギー反応ですが、ストレスが影響していると考えられるケースも少なくありません。一見全く関係なさそうな、皮膚とストレスの関係を探っていきます。
西洋医学的な知見
西洋医学的にも、アレルギーとストレスの関係が示唆されています。
ラットの実験
30年ほど前(1989年)の論文ですが、興味深い動物実験があります。
出典元:https://science.sciencemag.org/content/243/4887/83.long(内容を基に図を作成)
ラットにアレルギーの原因物質(卵白のアルブミン)を投与する時、一緒に音と光の刺激を与えました。原因物質が投与されているため、当然、アレルギー反応を示唆する数値(ラット肥満細胞プロテアーゼIIの量)は上がります。
興味深いのがその後。原因物質を投与していないのに、音と光の刺激だけで同様の数値が再上昇しました。
有名な「パブロフの犬」のアレルギー版の実験です。ストレスとアレルギー反応が無関係でないことを示唆する実験です。
ストレスが免疫細胞を刺激する可能性
精神的なストレスに見舞われると、脳の視床下部というところからCRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)というホルモンが分泌されます。
このホルモンが蕁麻疹を引き起こす免疫細胞(マスト細胞)に直接作用して、アレルギー反応に結びつくのではないかと考えられています。
ストレスが直接的にじんましんを引き起こす可能性のあるルートです。
西洋医学の弱点
ストレスとじんましんの関係のメカニズムは、だいぶ細かいところまでわかってきました。ところが西洋医学的に「ストレス性の疾患に対処する薬」は抗不安薬や抗精神病薬くらいしか存在しません。じんましんは抗ヒスタミン薬や塗り薬でコントロールできるため、ストレスに対して治療をしていくことは稀だと思います。
中医学で考える
それでは、中医学の視点からストレスとじんましんの関係を考えていきましょう。
ストレスで皮膚のバリアが弱まる
中医学でストレスの影響を真っ先に受けるのは“気”の巡りです。
全身の”気”が皮膚の表面に送られることで皮膚のバリア機能が維持されていると考えられています。“気”の巡りが悪い状態が続くと、皮膚表面のバリア機能が低下し、アレルゲンなどの侵入を許すことでじんましんが起きるというメカニズムが考えられます。
ストレスで熱が生まれる
ストレスで”気”が滞ると、そこには“熱”が生まれると考えます。
余談ですが、「空気を圧縮すると温度が上がる」というボイル・シャルルの法則。中学校の理科で習いましたね。その法則を人体に当てはめてしまう(?)昔の中国人。この考え方で治療効果が出てしまうのだから不思議なものです。
“熱”は”経絡”を通って、直接皮膚表面の炎症を起こすことがあります。このパターンでもじんましんは起こりえます。
中医学でのストレス対策
中医学でストレスの対処を担当しているのは”肝“という臓器です。”肝”の調子が何らかの理由で乱れていると、ストレスの影響を強く受けやすくなると考えられています。
“肝”の調整をする漢方処方には、四逆散、逍遙散、金鈴子散、抑肝散、竜胆瀉肝湯、柴胡清肝湯、杞菊地黄丸など様々なものがあります。例に漏れず、状態に応じての使い分けが”肝”要です。