本記事を読む前に
本記事を読むにあたり、「腎虚」の基本的なことを抑えておくと理解がスムーズです。
中医学における「腎」についてはこちらの記事。
腎の機能が低下した状態「腎虚」についてはこちら。
腎虚のパターンはいろいろ
腎虚の基本は「腎精不足」です。
ただし、腎精の「不足の仕方」には、様々なパターンがあります。
「栄養不足」といっても、足りない栄養素は、炭水化物、タンパク質、ビタミンなど様々。
「足りないもの」の種類により、現れる症状が変わるのと似ています。
本記事では、特徴的な腎虚、3種類について説明していきます。
固める力の不足
腎には、体液などが外に漏れないよう「固める」機能があります。腎の機能が低下すると、さまざまな「漏れ」が起きやすくなります。
腎は、特に泌尿器・生殖器・肛門などとつながりが深いため、腎精不足の症状にプラスして
- おしっこが近い・漏れる
- 夢精・早漏
- おりものが多い、月経の日数が長い
- 流産しやすい
といった「漏れ」の症状が現れます。
このような腎虚のタイプを「腎気不固」と呼びます。
腎精を補いながら、漏れを防ぐ作用のある漢方薬を使用します。
温める力の不足
腎精の生み出す「温める力」が低下した状態です。
腎精不足の症状に加えて
- 寒がる、体が冷える
- 尿の色が薄く、量が多くなる。
- むくみ、水分の停滞
- 月経が遅れる。無月経。
- インポテンツ
など、「冷え」「代謝の低下」といった症状が現れます。
冷えタイプの腎虚を「腎陽虚」と呼びます。
漢方薬を使う場合は、腎精を補うだけでなく、体を温める配合が必要です。
冷やす力の不足
腎精の中の「潤す力」「冷却する力」が低下した状態です。
体内の「冷却水」が減り、空焚き状態になっているイメージです。
腎精不足の症状に加えて
- 手のひら、足の裏のほてり
- のぼせ
- 胸の中が熱くなる
- 喉が渇く
- 寝汗をかく
- 月経が早まる
- 夢精、性欲亢進
などの症状が現れます。
腎精を補う生薬だけでなく、潤いを与えて余分な熱を冷ます生薬を配合した漢方薬を使用します。
腎虚タイプの見極めは重要
一口に「腎虚」といっても、そのタイプは様々です。
腎の「温める力」が足りない時に、冷やす薬を使ってしまうのはNG。温める力をさらに弱めて、腎虚の悪化につながることも。
「冷却力」が足りない時はその逆です。
年齢とともに忍び寄る「腎虚」。怪しいなと思った時には、タイプをしっかり見極めた上で対処していくことが必要です。漢方薬や中医学に詳しい薬局や医療機関を活用しながら、より適切な対策を見つけていきましょう。