東洋医学の話になると、避けて通れないのが”気”という概念です。とても深ーい考え方なのですが、ここではごく簡単に、”気”について説明させていただきます。
“気”は物質です
この宇宙は”気”でできている
「この鉛筆は何からできていますか?」と聞かれた時、多くの方は「原子」と回答されると思います。
「この鉛筆は”気”でできている」と考えるのが東洋的な発想です。
“気”は物質であり、物質を構成する最小単位と言えるのです。
現代科学では原子もさらに小さなものから構成されることがわかってきています。陽子、中性子、電子、素粒子、クオーク、レプトン…と、どんどん分割されていきます。「物質は”気”からできている」で済んでしまうのは、かえってシンプルで実用的な考え方ではないでしょうか?
“気”は動くことで作用を発揮する
この宇宙のものは、全てが常に動いています。
雨が降ったり、風が吹いたりするのは、全て空気や水といった「物質」が動いているからです。“気”という物質が動くことで、様々な変化が起こります。
“気”の面白いところは、たまに「エネルギー」としても扱われることです。時に物質、時にエネルギーを”気”と呼ぶのは、アインシュタインが提唱した「質量とエネルギーの等価性」という理論と整合性があるのかもしれません。
人体を構成するのも”気”
「人体は原子からできている」ということに異論を唱える方は少ないと思います。
東洋医学では「人体は”気”でできている」と考えます。
人体では、絶えず物質が動いたり変化をしています。食事を取れば胃腸が動き、消化で生まれた栄養素は血液に乗って全身に運ばれ、たどり着いた先の細胞で化学反応に使われます。呼吸によって酸素と二酸化炭素の交換が取り込まれることも必要です。このようなことを繰り返し、細胞や組織は生命活動を続けていきます。
このような生命活動を、東洋医学では”気”の動きとして説明しています。飲食物や空気中から取り込まれた”気”が全身を動き回り、時に体外に放出され、生命活動が続いていくという考え方です。
もし、人体を構成する”気”が不足したり、”気”の動きに異常が起きると病気になります。”気”の動きが停止してしまうと、死に至るのです。
“気”をコントロールする中国医学
中国医学は、古代からこの”気”をコントロールする方法を研究し、発展させてきました。薬物、鍼灸、気功、按摩、食養生など方法は様々ですが、すべて”気”のコントロールとは切って離せません。
実際に漢方薬を使う時には、気を補う薬、気の巡りを良くする薬、気を集める薬、気を体外に発散させる薬、などを使い分けていきます。
西洋医学の薬は、体内の原子を補充したり、原子の動きを変化させることを目指してきました。
東洋医学の薬は、体内の”気”を補充したり、”気”の動きを変化させることを目指してきました。
解釈の違いこそあれ、東洋医学も西洋医学も、「人体を構成する物質」に着目してきたという点に、何ら変わりはありません。