西洋医学における腎臓は、血液を濾過して尿を作るところ。その他にも、ビタミンDの活性化や血圧調整など、重要なはたらきを担っています。
中医学にも「腎」という内臓が登場します。その重要性は西洋医学以上かもしれません。
この記事では中医学における「腎」についてできるだけ分かりやすくご説明します。
腎は生命力の「貯蓄先」
生命エネルギーの源みなもと「精せい」
いきなり難しい言葉が出てきました。
「精を出す」「精魂尽き果てる」といった表現では馴染みのある「精」。
中医学における「精」は、私たちの生命エネルギーの根源物質です。
この「精」を蓄えることが「腎」の最も重要な役割です。
精をお金に例えてみると
- 生命力の「積み立て預金」=「精」
- 貯金箱(or 銀行)=「腎」
といった関係です。
- 銀行は十分な資金があることで機能します。
- 「腎」は十分な「精」があることで機能します。
成長・老化に関係
腎の「精」は、私たちが誕生した時から備わっています。さらに、精は飲食物から作られ、補充されます。
精の「貯金」が増えるに従い、成長発育が進みます。
加齢により「精」の貯金が減ってくると、老化が進みます。
精が尽きると、最終的に死が訪れます。
「精」にはエネルギーを作るミトコンドリアや、生命の設計図であるDNAなどの機能も含まれているのかもしれません。
生殖機能の中心を担う
腎に蓄えられた男女の「精」が結びつくことで、新しい生命=赤ちゃんが産まれると考えられています。
多くの方が知るように、西洋医学では精子と卵子が結びつくことで生命が誕生します。精巣や卵巣といった生殖器官の機能なども、中医学では「腎」の範疇に含まれます。
水分代謝を担う
尿を作り、膀胱を通じて排泄することを通じて、体内の水分を調整します。
ここでは詳細を割愛しますが、胃腸からの水分吸収や、体内での水分の巡りにも、間接的に腎が関わっていると考えます。
骨や脳神経系と深く関係する
腎は骨の管理を担っています。また、脳や脊髄といった神経系も、腎の担当範囲です。
成長の過程で腎精が十分に満たされないと、骨格形成に問題が生じるかもしれません。
加齢とともに腎精が衰えてくると、骨も脆くなってきます。脳が萎縮し、記憶力が衰えることなども、腎と無関係ではありません。
その他、腎と関係するもの
細かいものまで挙げると分量が多くなるので、抜粋して記載します。
呼吸
「腎は納気を主る」と言われます。
納気とは、「呼吸」の一部を指します。腎の異常があると、深く息が吸えなくなるなど呼吸の異常が現れることがあります。
西洋医学でも、腎臓による血液のpH調整に問題が生じた時に、呼吸に異常が出ることなどが分かっています。
運動神経
「腎は技巧を主る」と言われ、俊敏な動き、エネルギッシュな動きにも関与しています。
耳・髪
普段は体の奥に隠れて見ることのできない腎ですが、耳や髪にその状態が反映されると考えられています。
耳鳴り、難聴、白髪、脱毛などは、腎の不調を表すサインかもしれません。
最後に
腎のいろいろな働き、西洋医学とは異なるその重要性が何となくお分かりいただけたでしょうか?
「精」の貯蔵状態が、腎の健康を左右します。
腎と向き合うことは、いつまでも若々しくいるためにも大切です。
次の記事では、腎の機能が低下した時に何が起きるか見ていきましょう。