医薬品を提供しているお店にはいろいろな名称がつけられています。
薬局、調剤薬局、ドラッグストア、薬店、保険薬局、などなど。違いが分からない方も多いはず。当店も誤解されることが少なくないので、記事にしてしまいます。
本記事では、「おくすり屋」にまつわる名前の話を、フラットな視点からご紹介します。
調剤薬局、ドラッグストアに「法的な違い」はない
どちらも「通称」
薬屋の営業には、法律に基づき都道府県からの許可が必要です。
薬屋は、「薬局」「店舗販売業」「配置販売業」のいずれかに分類されます。
実は、法律の中に「調剤薬局」や「ドラッグストア」という言葉はありません。
実際に、「調剤をしているドラッグストア」「一般用医薬品や健康食品を売っている調剤薬局」は少なくありません。
お店のイメージ、ターゲットによって「調剤薬局」「ドラッグストア」などを使い分けています。
身もふたもない話ですが、あくまで各店のビジネスを成功させるイメージ戦略上の使い分けです。
薬局であることの見抜き方
薬局を簡単に見分ける方法。それはズバリ、「調剤室があるかないか」です。
調剤室がある薬屋は、ほとんどの場合で薬局です。薬剤師さんたちが薬を調合しているガラス越しの部屋のことです。窓には「調剤室」の文字が必ず記載されています。
ドラッグストアと謳われていても、調剤室があれば基本的に「薬局」です。調剤室がない薬屋は、店舗販売業です。
調剤室のある薬局は、一般用医薬品だけではなく、医療用医薬品や薬局製造販売医薬品といった、法的規制の比較的厳しい医薬品も取り扱うことができます。
また、薬局は店名に「薬局」をつけることが義務付けられています。「〇〇薬局」「薬局△△」など、店名に「薬局」の文字があれば間違いなく薬局です。
逆に、医薬品が置いてあるけれど調剤室がなく、店名に「薬局」がついていない場合は店舗販売業です。
薬局も2つに分類される
薬局と店舗販売業の見分け方はお分かりいただけたでしょうか?
薬局は薬局で、さらに様々な呼び名があります。
調剤薬局、門前薬局、面薬局、ドラッグストア、そして漢方薬局・・・。実はこれも法的な名称ではありません。
「保険調剤」はプラスアルファの機能
薬局は大きく2つに分類されます。
- (ただの)薬局・・・医薬品の販売、調剤はできるが、健康保険が使えない薬局
- 保険薬局・・・(ただの)薬局の機能にプラスして、保険調剤(健康保険を使った調剤)ができる薬局
分かりすくするため「ただの」という表現を使っています。保険薬局と比較し優劣をつけるものではありません。
実は、薬局であればどこでも処方せんに基づく調剤をしてもらえます。扱える薬局医薬品、一般用医薬品にも原則違いはありません。
ただし、保険薬局でないと処方せんのお薬であっても全額自己負担となります(価格設定は自由です)。処方せん調剤はよほどの理由がない限り、保険薬局に依頼するのが無難です。
一般用医薬品や薬局製造販売医薬品など、処方せん不要の医薬品を販売する当店のような薬局は、「保険薬局以外の薬局」に分類されます。
余談:「調剤薬局」の呼び名はナンセンス?
本来、薬局は「ただの薬局」がベースにあります。保険調剤という機能がプラスされた薬局が、保険薬局です。
世間では保険薬局が「調剤薬局」と呼ばれている節があります。ただ下記の資料にも見受けられるように、「調剤薬局」という言葉は今後消えていくのかもしれません。
今後、処方箋枚数は減少すると予測されており、これまでのような医薬分業の進展に伴う処方箋の増加に依存した業務では薬局の本来の役割は発揮 できないので、処方箋を持たなくても住民がアクセスできるような業務を行うべき。調剤だけが薬局の役割であるかのような「調剤薬局」という名称が用いられる状況は変えていくべき。
厚生労働省 第9回薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会(ペーパーレス・Web会議)資料より
まとめ
「おくすり屋」の分類と機能について、上記でまとめた点を表にしてみました。
一般用医薬品 | 薬局医薬品 | 調剤 | 保険調剤 | 管理者 | よくある通称 | |
店舗販売業 | ◯ | × | × | × | 薬剤師または 登録販売者 | ドラッグストア、薬店、薬舗など |
薬局 | ◯ | ◯ | ◯ | × | 薬剤師 | 薬局、漢方薬局、ドラッグなど |
保険薬局 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | 薬剤師 | 調剤薬局、薬局、ドラッグなど |
配置販売業という「置き薬」の業者もあるのですが、お店に足を運ぶ場合は以上3つの分類について知っておけば十分でしょう。
表だけ見ると保険薬局が最も優れているようにも見えますが、店舗販売業や、当店のような「ただの」薬局も、価格や利便性、特殊な専門性などを活かして生き残っているということを付け加えておきます。笑
必要な機能が揃っていること、さらに信頼できる薬剤師や登録販売者がいるかどうかなどを見極め、自分自身に最適なおくすり屋さんを選びましょう。