妊娠の条件(女性編)

子宝相談

自然妊娠するためにはどのような条件が揃うことが望ましいのでしょうか?

本記事では女性側について、西洋医学の視点から「条件」を考えていきます。ここで指す「条件」とは、「あったら理想的」といったものです。仮に一部が欠けていたとしても、絶対に妊娠できないというものではありません。女性の身体には、これほど神秘的な仕組みが備わっているのだということを、再認識していただけたら幸いです。

できるだけ正確な情報発信に努めておりますが、あくまで一人の薬剤師としての見解です。随時内容に修正を加えることがあります。

質の良い卵子

現代でも、妊娠のためには卵子が絶対的に必要です。さらに卵子はどんなものでも良いというわけではなく、ある程度の質が問われてきます。

卵子の質とは?

受精したときに、正常な細胞分裂を繰り返し、適当なスピードで成長する卵子を「質の良い卵子」と呼ぶことができると考えられます。

卵子の見た目が変わらなくても、質が悪い場合があります。受精しても成長(細胞分裂)が遅かったり、異常な分裂をする場合があります。受精しても成長が止まってしまう場合には、妊娠には至りません。

卵子の質に関わること

卵子の染色体(遺伝情報が含まれる部分)やミトコンドリア(エネルギー産生の場)に異常がある場合、細胞分裂に問題が生じ、卵子の質が悪いと判断される場合があります。

卵子のスムーズな移動

卵子の移動とは?

卵子はただ精子を待っているわけではありません。卵子自身も、卵巣→卵管→子宮と移動します。

移動にはタイミングも大事です。受精ができるタイミングで精子と出会い、ベッド(子宮内膜)の準備が完了したタイミングで子宮に到着しなくてはなりません。タイミングにズレが起こると、妊娠できない場合があります。

卵子の移動を邪魔するもの

卵子が卵巣から出てこない

排卵に関わるホルモンバランスの異常、卵巣自体の異常などで起こります。

卵子が卵管で止まってしまう

卵管が詰まっていたり、卵管の動きが悪い場合などに起こります。

精子を迎え入れること

体外受精を除き、女性の体内で、精子と卵子が出会うことが必要です。精子を子宮内に迎え入れるためには、男性だけでなく、女性の力も必要となります。

「おりもの」の状態がカギ

膣内に入った精子が子宮内に入るには女性の「頸管粘液けいかんねんえき」の力が必要となります。いわゆる「おりもの」です。

子宮の入り口に正常な「おりもの」が十分に分泌されると、精子がそこを通って膣から子宮内へと入っていくことができます。「おりもの」は妊娠のために重要な働きを担っています。

おりものの量が不十分だったり、炎症などで粘り気が過度になってしまうと、精子が子宮内に入っていけない場合があります。

「おりもの」以外の要因

子宮の入り口が塞がれている。

「おりもの」に問題がなくても、精子の迎え入れに問題が出る場合があります。主に次の2点です。

ポリープなど何らかの原因で、子宮の入り口が物理的に塞がり、精子が通れなくなる場合があります。

精子を攻撃してしまう。

女性の免疫が、精子を敵とみなして攻撃してしまう場合があります。卵子にたどり着ける精子が減り、妊娠できない場合があります。

子宮内膜の準備

上記の3条件が全て満たされたとき、質の良い卵子が授精し、胚盤胞まで成長します。

胚盤胞がタイミングよく子宮に向かった次に起こるのは着床です。胚盤胞が子宮内膜に潜り込み、お母さんから安定して栄養がもらえる見通しがついたところで、妊娠が成立します。

着床は、胚盤胞が子宮内膜に接すれば起きる、というわけではありません。ここでは子宮内膜の「質」も重要だと考えられています。

子宮内膜と胚盤胞のコミュニケーションが大切

胚盤胞と子宮内膜が近づくと、両者の間で様々なコミュニケーションが行われます。受精卵と子宮内膜を構成する遺伝子は赤の他人のもの。コミュニケーションがうまくいかないと、着床が失敗する原因となります。

胚盤胞や子宮内膜からは、それぞれメッセージとなる物質が放出されています。順調に事が運べば、子宮内膜は受精卵を受け入れます。

しかしこのメッセージは移ろいやすいもの。子宮内膜証や、微生物による子宮内膜の炎症、子宮筋腫の存在などがこのメッセージに悪影響を及ぼす場合がある事がわかってきています。

タイミングも重要です。子宮内膜には着床を受け入れられる時間には制限があります。この時間は着床期ウィンドウと呼ばれます。決められた時間を外してしまうと、着床が成立しない事があります。

まだまだ不明な点も多い「着床」

自然妊娠では着床がうまくいっているかどうかの判断は困難です。

体外受精では、質の良い胚盤胞を何度移植しても着床しないことがあるため、「着床不全」という言葉が生まれてきました。上記に挙げた内容は、着床がうまくいかない原因の、あくまで一例です。

未知の原因もまだまだ存在すると考えられており、今後の解明と治療法の確立が待たれる分野です。

妊娠の条件はとても複雑

男性側の要因を加えたら、ますます妊娠の仕組みは複雑です。現代医学をもってしても、まだまだ分からないことの多い分野です。

ただし、大まかな「条件」に目を向けることで、妊娠できない時の解決法が見つかる可能性があります。ある程度の妊娠の細かい仕組みを知っておく事は、問題を見逃さないためにも重要だと考えます。