妊活に中医学(漢方薬や鍼灸など)の取り入れる時、西洋医学とは異なる視点で身体と向き合っていくことも必要です。ちょっぴり不思議な中医学の世界にお招きします。
妊娠のメカニズム
妊娠のメカニズムは至ってシンプルです。男女の性交後、以下の2つの段階を追って進んでいきます。
男女の”精”が結びつき、新しい命が生まれる
中医学では男女の”精”が結びつくと新しい命が生まれると考えられています。この”精”は両親の”腎”という臓器に貯蔵されています。
両親から受け継いだ”精”は、生まれてきた子供の”先天の精”となり、子供の一生を支える原動力となります。
西洋医学では卵子と精子が結びつくことで、新しい命が生まれると考えられています。卵子は卵巣に、精子は精巣に貯蔵されています。中医学の”腎”は、卵巣や精巣の機能を一部含んでいます。
女性の”気血”で胎児が成長する
男女の”精”が結びついて生まれた命。最初はまだまだ弱々しいものです。
ここにお母さんから栄養が供給されると、赤ちゃんは子宮の中に留まり、ぐんぐん育ち、十分に大きくなってから生まれてきます。この栄養が”気”と”血”です。赤ちゃんの成長には”精”だけでなく、”気”と”血”も負けず劣らず大切なのです。
3つの物質が不足すると?”
妊娠するために”精”・”気”・”血”の3つの物質が必要な事はお分かりいただけたでしょうか。逆にこれらの物質が不足すると、妊娠しにくくなると考えられます。
実際に不足すると何が起こるのか?不足する原因も含めて、物質ごとに見ていきましょう。
“精”の不足
不足の原因
- 加齢
- 栄養不足
- 過度な性生活
- 慢性化した体調不良
- 遺伝的要因 など
“精”の材料は”気”と”血”です。気血の不足が長期化すると、精も不足します。疲労やストレスが長く続き、加齢による消耗に拍車をかけているケースが多々あります。
不足時の代表症状
足腰がだるい、慢性的な腰痛、歯や骨がもろい、根気がない、老化が早い、耳鳴り、月経不順、無月経など
「歳のせい」と言われる症状には腎精の不足が絡んでいることが少なくありません。
“気”の不足
不足の原因
- 過労
- 胃腸が弱い(食欲が少ない、軟便傾向など)
- 食生活の乱れ
- 過度なストレス
- 慢性的な体調不良 など
“気”の原料は、「飲食物と空気」です。不適切なダイエットや偏食でも”気”の不足は起こります。運動不足やストレスで呼吸が浅くなっている方にも”気”の不足が起こりやすい印象です。
不足時の代表症状
元気がない、気力がない、声が小さい、体がだるい、何かをするのがおっくう、食欲がない、軟便や下痢、息が切れやすい、汗がダラダラ出る、カゼを引きやすい、血が止まりにくい、など
1日の終わりなど、疲れた時に現れやすい症状です。
“血”の不足
不足の原因
- 慢性的な出血
- 月経時の出血量が多い
- 胃腸が弱い
- 食生活の乱れ
- 慢性的な体調不良
- 長期間のストレス
- 血行不良 など
“気”の不足が慢性化すると、血も不足してきます。貧血がなくても”血”の不足が起きていることは少なくありません。月経のある女性は、”血”を消耗する機会が多いです。
不足時の代表症状
顔色に艶がない、爪の質が悪い、髪の質が悪く抜けやすい、目の症状(乾燥、疲れ、違和感など)、筋肉が痙攣する、眠りが浅い、不安感、月経時の出血量が少ない、など
複数の症状がまとめて出ている方が多く見受けられます。
巡りをよくする事も必要
十分な”気”と”血”があっても、身体を巡らなければ宝の持ち腐れ。必要な部分に気血が巡ってこそ、初めてその力が発揮されます。
気血の巡りが悪い時に起こる可能性がある現象です。
- 生殖器の血流が悪くなる。
- 脳からの神経伝達が乱れる。
- ホルモンバランスが乱れる。
- 排卵や射精に問題が生じる。 など
巡りが悪い時は、”血瘀証”や”気滞証”などと考えてケアしていきます。
巡りが悪くなる原因も様々。別の記事にて解説していく予定です。
総合的に考えることが大切
ここまで妊娠を妨げる原因をいくつか挙げてきましたが、当てはまる部分はあったでしょうか?
いくつもの心当たりがあった方は、自分の本当の状態がどれなのか、さっぱりわからないかもしれません。日頃の生活習慣や、過去の健康にまつわるエピソードを振り返ってみることで、改善方法が見つかる場合があります。
“精”・”気”・”血”の状態が整うと、自然と妊娠も近づいてくるはずです。男女関係なく、まずは自分自身の体調を万全にすることが、妊娠への近道だと考えています。