当記事の内容は令和3年度の制度に基づいています。令和4年4月1日より、不妊治療の保険適用範囲に伴い一部の助成金制度が廃止されますのでご注意ください。
2021年現在、不妊治療の一部は健康保険の適用外です。ある段階からは全額自費で治療を進めることとなりますが、国や自治体による助成金制度を上手に利用することで、経済的な負担を最小限に抑えることができます。
ただし、利用できる条件はけっこう複雑。全体像を把握しておかないと、「あの時、この制度が使えたのに…!」と後悔することにもなりかねません。
秩父市にお住まいの方が利用できる制度を、主な治療の段階ごとにまとめてみました。少しでもお役に立てたら幸いです。
不育症検査の助成制度については、別記事でご紹介する予定です。
〜注意〜 本記事は、筆者自身がホームページの情報や条例を元に解釈し、まとめたものです(令和3年9月更新)。 筆者は秩父市の関係者ではなく、当ブログも秩父市とは一切関係ありません。 解釈に誤りがある可能性もありますので、各種制度の利用を検討した段階で、担当の窓口に相談することをお勧めします。 ※当ブログの内容に誤りがあることに気づかれた際は、問い合わせフォームからご指摘いただけると嬉しいです。
Step1.不妊検査
検査全般について
こうのとり検診推進事業(秩父市)・不育症検査費用助成事業
検査にかかる自己負担額のうち、最大2万円。
不妊治療の方針を決めるため、まずは検査を行うケースが一般的です。
検査の段階で利用できるのが、秩父市早期不妊検査費(こうのとり健診推進事業)・不育症検査費助成事業です。
以前から、不妊検査は一部を除いて健康保険の対象となります。この制度は、健康保険と併用可能です。
申請時に法律上の婚姻をしている夫婦であること、夫婦の少なくとも一方が秩父市に住民登録をしていることが条件です。検査開始時に、女性の年齢が43歳未満であることなども必要です。
また不育症の場合を除き、夫婦揃って検査を受けていることが必要です。夫のみ、妻のみが検査を受けた場合は対象外になってしまうので、ご注意ください。
利用できるケースは多く、知っておいて損はない助成制度です。
秩父郡市内でこちらの助成制度の対象となっている医療機関は、秩父市立病院と岩田産婦人科医院です。秩父市立病院は泌尿器科での男性不妊検査に限られます。(令和3年4月12日現在)
その他、埼玉県内の助成対象医療機関は次のリンクをご参照ください⇨早期不妊検査費助成事業(こうのとり健診推進事業)・不育症検査費助成事業 埼玉県内の対象医療機関一覧(埼玉県ホームページ)
もし埼玉県外で検査を受ける場合には、こちらの指定医療機関(厚生労働省ホームページ)であることが必要です。
現在は、上記の要件が廃止され、全ての医療機関における検査が対象となりました。(令和3年9月13日更新 参照元:埼玉県ホームページ) ※ ただし、不妊症の診断のため、医師が必要と認めた検査のみが対象です。今後も不妊症に詳しい医療機関で検査することをお勧めします。
医療保険適用外の検査について
検査には医療保険適用外のものが含まれる場合があります。この場合も当事業は適応となりますが、STEP.2でご紹介するゆりかご支援事業(秩父市)の利用も併せて検討してみましょう。
STEP2. 一般不妊治療
精子と卵子を、体内で受精させることを目指す治療です。体外受精以外の治療と考えていただければ十分です。
タイミング指導、卵管鏡下卵管形成術(FT)
健康保険適用。利用できる助成制度なし。
排卵のタイミングに合わせた性交の指導と、詰まっている卵管を内視鏡で開通させる手術です。
これらの治療に利用できる助成制度は今のところ見つけられていません。ただし基本的には健康保険の適応(自己負担3割)となります。
人工授精(IUI)
ゆりかご支援事業(秩父市)
医療保険適用外の医療費(検査・治療・投薬料等)のうち1/2の金額、最大5万円。
採取した精子を、注射器で子宮内に送り込み、体内で受精させる治療法です。こちらは健康保険の適応外ですが、秩父市民の場合、ゆりかご支援事業が利用できます。
同一の夫婦に対して年度あたり1回まで、生涯2回まで制度を利用できます。
こちらの制度は年齢制限がなく、医療機関の明確な指定もありません。
ただし、秩父市内に1年以上住民登録をしていることが必要です。
追記) 保健センターに確認したところ、保険対象外の治療のうち「医師の指示が証明される医療費」が対象とのことです。
STEP3. 生殖補助医療(ART)
特定不妊治療(体外受精・顕微受精)、男性不妊治療の一部
埼玉県不妊治療費助成事業と、秩父市早期不妊治療費助成事業(併用可能)
治療1回あたり10〜60万円(埼玉県)+最大10万円(秩父市)
体外受精とは、手術で卵巣から採取した卵子を、体外で精子と受精させ、受精卵や胚を子宮に戻す方法です。顕微鏡を使用し、精子を卵子に注入する方法は顕微受精と呼ばれます。
男性不妊の治療のうち、「精巣内精子生検採取法(TESE)」や「精巣上体内精子吸引採取法(MESA)」等、精巣などから精子を取り出し、体外受精に使用する手術も別途助成対象となります。
埼玉県不妊治療費助成事業は、支給額が最大の助成制度です。体外受精に進んだら必ず目を通しておいてください。おそらく医療機関でも利用方法を教えてもらえるはずです。
法律上の婚姻をしている夫婦だけではなく、事実婚の夫婦でも利用できるようになりましたが、女性の年齢により受けられる助成回数が変わります。
治療開始時の女性の年齢が、40歳未満の場合は6回まで、40歳〜43歳未満の場合は3回まで、助成が受けられます。43歳以上で治療を開始した場合には、助成が受けられません。
秩父市早期不妊治療費助成金は、女性が35歳未満の場合のみ対象です。こちらは事実婚は対象になりません。また、埼玉県不妊治療費助成事業と併用した場合、そちらでまかないきれなかった額のみですが最大10万円の支給、回数は1回のみです。
いずれも特定不妊治療を実施している指定医療機関のみでの適応です。
制度の特徴一覧表
ここまでご紹介した助成金制度の主な内容を、表にまとめてみました。表に記載していない詳細条件もありますので、参考程度にご覧ください。※最終更新:令和3年9月13日
※スマートフォンは横にすると見やすいです。
項目/制度 | 秩父市早期不妊検査費助成事業(こうのとり健診推進事業) | 不妊治療費助成事業 (ゆりかご支援事業) | 秩父市早期不妊治療費助成事業 | 埼玉県不妊治療費助成事業 |
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治療段階 | 検査(不妊症) | 検査~治療 | 体外受精・顕微受精・一部の男性不妊治療 | 体外受精・顕微受精・一部の男性不妊治療 |
妻の年齢制限 | 43歳未満(検査開始時) | 制限なし | 35歳未満(治療開始時) | 43歳未満(治療期間の初日) ※40歳未満だと助成回数が増加。 |
助成回数 | 1回まで | 年度内1回、生涯2回まで | 1回限り | 出産1人あたり3回、もしくは6回まで(出産でリセット) |
1回あたり助成額 | 最大2万円 | 最大5万円 | 最大10万円 | 10万円もしくは30万円(男性不妊治療併用で最大60万円) |
婚姻要件 | 法律上の婚姻(申請時) | 夫婦のみ | 法律上の婚姻(申請時) | 法律上の婚姻、もしくは事実婚の夫婦(治療期間の初日) |
住民要件 | 秩父市に住民登録がある(夫婦の片方でも可) | 秩父市に1年以上住民登録がある | 秩父市に住民登録がある(夫婦の片方でも可) | 埼玉県に住民登録がある(夫婦の片方でも可) |
対象の医療機関 | 要件なし | 指定なし | 指定医療機関 | 指定医療機関 |
注意事項 | 夫婦両方の検査が必須 | |||
申請窓口 | 秩父保健センター | 秩父保健センター | 秩父保健センター | 秩父保健所 |
詳細リンク | 秩父市 | 秩父市 | 秩父市 | 埼玉県 |
終わりに
全体像を知ったうえで、個別にプランを考えることが大切
不妊治療の医療費助成制度は、探すといくつも出てきます。ただし、条件面がそれぞれ異なるため、どの段階でどの助成制度を使ったらよいのかが分かりにくいかもしれません。
本記事では不妊治療の全体像を見据えたうえで制度の利用が検討できるよう、あえて主流の治療段階ごとに整理しました。個別の状況により制度の使い方は何パターンにも分かれますので、信頼できる専門家を活用しながら決めていくと安心です。
年齢や婚姻、秩父市にいつから住民登録があるか、等により利用できる制度の選択肢は大きく変わりますのでご注意ください。
特にSTEP.3の生殖補助医療は、女性の年齢等、個別の状況で最大助成額が倍以上変わります。制度を知ることは、結婚や治療開始のタイミングを決めるうえでの助けとなるはずです。
ただし、支給額が大きくなるからという観点だけで、焦って治療段階を進めることはお勧めしません。各種治療には特有のリスクを伴うので、医師等の専門家と相談し、熟慮してプランを立てることが大切です。
各種制度の全体像を知ったうえで、最適な治療計画を立てていきましょう。