新型コロナウイルスの影響で、巷で注目されている板藍根。読者の皆様にも愛用されている方はいらっしゃると思います。
一方で、「板藍根がコロナに効く!」と謳って含有製品を販売したことで薬機法に触れる事例も相次いでいます。日本で医薬品として承認されている板藍根製剤は存在しないため、効能効果を謳うことは法律上許されていません(下記リンク参照)。
板藍根に関する様々な研究が行われているのも事実です。ただし、中国や台湾で板藍根含有製剤が様々な治療に使われているという事実だけでは、科学的な効果の証明にはなりません。ここではあくまで学術的な検証として、私自身の見解も交えながらご紹介していきたいと思います。
本記事の根拠となる情報は、Pubmed(医学論文の検索データベース)、およびGoogle Scholarから独自調査しています(2021年2月6日時点)。検索漏れの論文がある可能性を念頭においてお読みください。また、フルテキストは必ずしも確認できていない点をご了承ください。
板藍根はコロナに効く?
結論:効くかどうかは分かりません。
Pubmedで板藍根(検索語:Isatis、Ban Lang Gen、Chinese Indigo、Da Qing Ye)とCOVID-19の組み合わせを検索したところ、板藍根に関する研究論文は、以下の2件が見つかりました。
どちらの論文にも、「板藍根がCOVID-19の治療薬候補として有望⇨今後の研究が望まれる」といった趣旨の内容が書かれています。板藍根をCOVID-19の治療(人体)に使用したわけではないので、現時点で臨床効果は証明されていません。
細胞を使用した実験で抗ウイルス作用(新型コロナではありません)が示唆された論文は存在しますが、人体に使用した時に同じ結果が出るとは限らないので、それだけで効果を謳う根拠にはなりません。
しかし、効果が否定された研究も存在せず、「調べる価値はあるけれど、科学的に効果があるかどうかは分からない」というのが現状だと考えています。
臨床試験の研究論文を検索できるPubMed Clinical Queriesでも板藍根による治療研究を検索しましたが、COVID-19の発生する2019年以降の研究論文は見つかりませんでした。
なぜ効果を謳う事例が相次いでいる?
中国医学では、板藍根には「清熱涼血解毒」という作用があると考えられています(「中医臨床のための中薬学 神戸中医学研究会編著」 より)。
新型コロナウイルス肺炎診療ガイドライン第7版(中華人民共和国国家衛生健康委員会)には、COVID-19は中医学の観点から、「疫」という病気として記載されています。日本医師会の公式ホームページに本ガイドラインの翻訳版が掲載されています。
「疫」は感染力が高く重症化しやすい流行病の一種で、治療には「解毒作用」のある生薬が使用されます。
以前から「(試験管内での)抗ウイルス作用」の研究が取り上げられることもあった板藍根が話題になったことも頷けます。
結局のところ、板藍根は使えるの?
日本で板藍根を使用するときは、あくまで一つの食品として自己責任で使用することになります。心配な方は体質や薬との飲み合わせを、専門家に相談することをお勧めします。
科学的に証明されていなくても、東洋医学に有用なものが数多くあることは否定しません。私自身はそのような食品を使うことがありますし、患者さんに勧めることも少なくありません。生活にうまく取り入れれば、メリットを得られることもあるでしょう。
板藍根とCOVID-19の関係については「今後の研究に期待」といったところでしょうか。