漢方相談では、子宮筋腫特有の症状で悩まれているケースはまれです。他の心身の不調で相談された方に詳しく伺っていくと、子宮筋腫の経過観察中だったというというケースがほとんどです。
今回はこの子宮筋腫について、漢方薬局の観点から「原因」を考えていきます。1回目は、西洋医学的な視点から解説します。
子宮筋腫はなぜ起こる?
西洋医学の視点から
女性ホルモンが関係
閉経前の女性が子宮筋腫を持っている可能性は、閉経後の女性に比べて10倍も高いというデータがあります(参考文献1)。
女性ホルモンの1種であるエストロゲンが、子宮筋腫の成長に関係していると考えられています。
エストロゲンの分泌を調整する薬が承認され、子宮筋腫を小さくするために使われています。
しかし、月経のある女性は誰でもエストロゲンが分泌されているにも関わらず、子宮筋腫のできる人とできない人がいます。エストロゲン以外にも原因があるはずですが、完全には解明されていません。
他の原因は何か?
エストロゲン以外に、子宮筋腫のリスクと関連するものはあるのでしょうか?
ある論文では、下記の要素が子宮筋腫のリスクを上げることが示唆されています(参考文献2)。
- 人種(黒人に多い)
- 加齢
- 家族歴
- 最終出産から時間が経過すること
- 高血圧(降圧薬使用中の人も含む)
子宮筋腫のある人は、ない人に比べ、食品添加物を多く取っていた、豆乳を多く取っていたというデータもあります。
「食品添加物や豆乳を取ると、子宮筋腫ができやすい」というわけではありません。「子宮筋腫の人はもともと健康意識が高く、豆乳を摂取していた」可能性などもあるためです。
結婚していたり、教育を受けていたり、喫煙歴が全くないと、子宮筋腫の可能性が高くなるというデータもあり、原因はかなり複雑と言えるでしょう。
出産の回数が多いと、子宮筋腫の可能性は低くなるようです。
精神的な「抑うつ」がリスクを上げる可能性
精神状態は女性ホルモンのバランスに影響を与えます。
強いストレスがかかった時に、月経周期が乱れることを経験された女性も多いのではないでしょうか。
黒人女性を対象として、抑うつの状態が子宮筋腫の発症率に影響を与えるかどうかを調査した研究があります。(参考文献3)
こちらの研究では、うつ病を発症した人ほど、そしてうつ病を評価するスコアの高い人ほど、子宮筋腫を発症するリスクが高いことが示唆されています。
精神状態が子宮筋腫の発症と関連することの裏づけとなる研究です。
本当の原因は未だ不明
このような研究はありますが、子宮筋腫の本当の原因は未だにわかっていません。癌などと同様に、原因が複雑なため、それを1つに絞ることは今後も困難になることが予想されます。
次の記事では、中医学的な子宮筋腫の捉え方についてご説明します。
参考文献一覧
参考文献1) Chiaffarino F, Parazzini F, La Vecchia C, Marsico S, Surace M, Ricci E. Use of oral contraceptives and uterine fibroids: results from a case‐control study. Br J Obstet Gynaecol1999;106:857–60.doi: 10.1111/j.1471-0528.1999.tb08409.x.https://obgyn.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1471-0528.1999.tb08409.x(参照2020-9-17)
参考文献2) E A Stewart. et al. Epidemiology of uterine fibroids: a systematic review.BJOG. 2017 Sep;124(10):1501-1512. doi: 10.1111/1471-0528.14640.https://obgyn.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/1471-0528.14640(参照2020-9-17)
参考文献3) Lauren A. Wise. et al. Depressive Symptoms and Risk of Uterine Leiomyomata. Am J Obstet Gynecol. 2015 May;212(5):617.e1-10. doi: 10.1016/j.ajog.2014.12.012.https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4417041/(参照2020-9-17)