シェーグレン症候群に漢方薬で向き合う(前編)

膠原病

あくまで漢方薬に関わる薬剤師一個人としての私見であることをご承知のうえ、お読みください。一般の方向けに簡略化して記載しています。

シェーグレン症候群について

薬局やインターネットでも時々出会うことのある、シェーグレン症候群。自己免疫により唾液腺や涙腺の機能に異常が生じ、口の乾燥や、目の乾燥を中心とした症状が現れます。難病情報センターによると、日本では少なくとも6万8000人、ある予測によると10〜30万人の方が罹患しているのではないかと言われています。

シェーグレン症候群の詳しい解説はこちらへ → https://www.nanbyou.or.jp/entry/111(難病情報センターのホームページにリンクしています)

根本治療は未確立で、合併症にも注意しながら長く付き合っていかなくてはならない病気と言われています。そのような症状を経験したことのない私はその辛さを完全に理解することはできませんが、生活の質が落ちて辛い経験をされている患者さんに出会うと、その大変さや不安感がひしひしと伝わってきます。

対症療法として新しい薬が充実しつつあり、漢方薬のエビデンスも蓄積しつつあります。それでも効果が得られない患者さんは一定数存在します。この記事をお読みになられているあなたも、その中の一人かもしれません。

漢方薬は効果が薄い?

「漢方薬も使ってみたけれど、あまり効かなかった」という話はよく聞きます。

病院では麦門冬湯、人参養栄湯、白虎加人参湯などが処方されることがあるようです。中国の医学理論に則って漢方薬を使用しているお医者さんはごく少数派と見受けられます(あくまで私自身が処方せん調剤で受けてきた印象です)。いわゆる「病名漢方」としての使用法です。

漢方薬には、中国医学の理論に乗せて使用することで初めて効果を発揮するものもあります。私は中医学理論を用いています。

私は「病名漢方」も否定しません。効率的に漢方薬を使用するにはとても優れた方法だと考えています。その中で効果の出なかった患者さんに打つ手がないのがデメリットだと考えています。

乾燥症状の治し方のイメージ

今回は例え話を用いて、乾燥症状をどうケアしていくかを考えていきます。

シェーグレン症候群を初めとした「口や目の乾燥」を中医学で治す方法を、「自然災害の被災地への給水」に例えてみましょう。

ある災害で水道が使えなくなってしまった町があるとします。この町の住民をどのように助けますか?

乾燥した口や目を、町の住民に置き換えて考えてみます。

給水車で水を運ぶ

口や目など、局所をとりあえず潤す方法です。

まずは給水車で水を運びます。この方法は短期的には有用なのですが、ずっと続けるのは大変です。続ければ続けるほど、費用と労力がかさみます。環境への負担も大きいでしょう。

「とりあえず口や目を潤す漢方薬」は給水車に該当します。麦門冬湯や白虎加人参湯は、この段階の漢方薬だと考えています。

水道を復旧する

身体の水分を、口や目に届けるためのルートを確保します。

水道に問題があることがわかった場合、一日も早い復旧を目指します。水源の水を、必要な場所にスムーズに送るための措置です。

「体内の水分の流れをスムーズにする」漢方薬が該当します。体内の水分が移動するルートに詰まりがあれば、それを除去する漢方薬を使用します。

環境保護に取り組む

水分を安定的に確保できる「体質」を作る方法です。

そもそも水源に水がなかったら、水道が復旧しても水不足が解消されません。

水源を安定的に確保するためには、極端な気候変動を抑えていく、山に木を植える、など長期的な対策が必要です。ダムを作ることも有効かもしれません。

中医学では、身体に「有用な水分」を作る仕組みが備わっていると考えられています。臓器や免疫のバランスが崩れた時に、この仕組みが狂ってしまい、十分な「水分」を作れなくなることがあります。体全体のバランスを取り、「水分」を作る機能を回復させるため、様々な漢方薬を使い分けていきます。

漢方薬を効かせるには?

乾燥症状に対してひたすら給水を繰り返していたのでは、いつまで経っても根本改善しないのではないか?と思われるでしょう。

給水を繰り返しているうちに、環境がさらに悪化していく可能性があります。それによって起きる新たな災害が合併症として現れることも。災害が続き、道路が遮断されることで給水車がたどり着けなくなってしまう(今まで効いていた漢方薬が効かなくなる)事態も考えられます。

漢方薬が効かないときは、中国医学の理論から、体の状態を見直してみる必要があります。

短期的な給水だけでなく、環境保護(体質改善)をしていくことはとても有意義なことではないでしょうか。